「あ、これ調べといたから」
「へ?」



もう一度ハロルドを訪ねると何やら地図を渡された。
広げてみると其処には×印と△印が幾つかついている。



「何これ?」
「×がモニュメントのある場所で、△が遺跡とか神殿よー。感謝しなさいよ、これ軍内部の情報使ったんだから」
「…うおぉ…すげええ。マジ、ありがとう!!」


本当は昨日の今日でハロルドの所に来るの怖かったんだけど、こうしてみると彼女はとてもいい人なんじゃ…



「お礼は体で返してねん






あ、今の無し。









これで、ようやく決まった。オレの旅の目的。
この地図のお陰でクエストが入る前にこの印がついている場所を回ることが出来る。
イクシフォスラーが手に入ったんだから、何処にでも行けるしな!





さん、どうせならモニュメント全て回ってみたらどうです?」
「そうね…精霊の力を借りれるなら借りるに越した事は無いわね。貴方には+になるわけだし」
「それに各地の精霊を目覚めさせればマナを増幅させることが出来ますよ」



テネブラエの言葉にオレは目を見開いた。
精霊を目覚めさせる事にそんな利点があったなんて聞いていない。


「マジで!?」
「ええ。我等センチュリオンと同じくして精霊はマナを司っております。
 眠りについている所為でマナが薄れたままなのです。目覚めれば大樹により力を与えられます」


「「「それを早く言ってよ/言いなさい/言ってください!!!」」」


じゃあ、オレが全部の精霊を目覚めさせればこの世界は滅ばないんじゃ…



そう考えれば希望がどんどん湧いてくる。












「でも、モニュメントで精霊目覚めさせるには石版がいるんでしょー?」









ハロルドの言葉にオレ達の動きが止まった。



……そうだった。


つい、行けば良いと思ってたけど。






遺跡や神殿に隠されている石版が無ければモニュメントで精霊を呼び起こせない。
じゃあどう考えても同時に攻略していく事になるのか…。





が持ってるのは後一つね。これが何処のモニュメントの石版か判ればそれだけでも行けるんじゃない?」
「そうですね。テネブラエ、何か手はありませんか?」
「私にお任せください」




テネブラエの前に石版を置くと、その匂いを嗅ぎ始めた。



「こちらはウンディーネのマナを感じます。水のモニュメントの石版と見て間違いないでしょう」
「センチュリオンってそんなのも解るの!?すげー!!!」
「マナの性質は我等センチュリオンが持つものと同じですから」



じゃあ最初に行くのは水のモニュメントってことで決定だな。





「じゃあ取り合えず出発の準備を―――
「ハロルド博士っ!!!」?」




いきなりハロルドの研究室に飛び込んできた研究員、その姿はボロボロだった。



「何があったの?」
「も、モンスターが…また街に…っ」



それだけ言うと研究員は倒れた。
気絶しているだけのようだ。



「リフィルさん!」
「ええ。
ハートレスサークル!


リフィルさんの治療術のお陰で心配はいらないだろうけど…またモンスター?
なんでこう何度も何度も…しかも真昼間から…?



窓に駆け寄り街を見ると逃げ惑う人々の姿を見えた。
そしてモンスターの群れ。
この間とは比べ物にならない数だ。






「…っち!」
さん、どうやらモンスターは王宮へ向かってるみたいですよ」
「…ほんとだ、なんで…」





皆一様に進行方向は城。

ハロルドはばつの悪そうな顔をする。




「あっちゃー…。なんてタイミングの悪さなのかしら。今、軍の部隊が遠征に行ってる時に…」

「え?!こんな時に!?」



「元々モンスター騒動もその遠征が始まってからなのよ。居ない時を狙ったようにね。

 でも最初は今いる部隊だけで太刀打ち出来るレベルだったから呼び戻すなんてことはしなかったんだけど…。

 流石に何度もモンスターが入り込むなんておかしいじゃない?だから部隊を引き上げるように命令が出たのに…帰ってこなかった」



「…もしかしたら何処かしらで足止めされてるのかもしれませんね」

「そういうこと。だから外からの助けは今は望めないわ」




なんとも絶望的な言葉。
だがそれを聞いて、怖気づく者は誰一人としていなかった。




「わかった、ならオレが行く!」
!?…まあ貴方ならそう言うと思ったわ。私も一緒に行きます」
「ま、乗りかかった船ですよね」
「なら私もあんた等に付いて行くわ。城にさえ着けば私の最強兵器があるもの。ぐっふっふっふ〜」




ハロルドのその笑みに一瞬オレ達が引いたのは秘密だ。


























「くらえ
蒼破刃、続いて牙連蒼破刃!!!!

苦無・焔!暗走雷電!!

「聖なる槍よ、敵を貫け…ホーリーランス!!」

「裁きの時来たれり、還れ虚無の彼方!エクセキュージョン!!!」







道すがら魔物を退治していくとハロルドが首を傾げた。
スペクタクルズを取り出し、魔物に掲げる。



「どしたの?」


「おかしいわ…。こんな種類この辺に生息していないもの」

「誰かが連れ込んだと言う事ですか?」

「そうとしか言いようが無いわ。…黒幕がいるのね」


魔物をマジマジと観察していたハロルドはもう充分、と立ち上がり裾の汚れを払う。
そして懐からあるモノを取り出し、オレにそれを手渡した。




「これは?」

「城の地下抜け道の鍵よ。城に正面から行っても危険だろうからね」

「私達にこれを渡すと言う事は…貴女此処で別行動を?」

「そ。ちょっと準備に時間かかるから先に行っててちょーだい。抜け道の入り口は城の近くの教会の祭壇の下よ」




それだけ言うとハロルドは先に行動し始めた。


「僕らも行きましょう」

「ああ」





















ハロルドの忠告通り、教会に向かったオレ達は入り口を探した。
祭壇の下には赤いカーペットが敷いてある、それをめくると一部床の色が若干違っていた。

触れてみると床板が外れ、梯子があった。
慎重に地下へと降りていくとまっすぐと城方面に伸びる地下道が広がっていた。





「なんでこんな道があるんだろ」
「非常用の脱出口でしょう。だが今は使われていないようだ」
「流石に暗いわね…。皆気をつけなさい」




地下道の最終はうっすらと光が差し込んでいた。
そこには風も吹いている、此処が出口なんだろうけどどうやって開ければ良いんだ…?




さん、鍵穴が此処に」
「ハロルドから貰った鍵!」





かちゃり、と言う音がした後押してみると壁がゆっくりと開いた。



中へ入ると目の前に見えるのは鉄格子。




「…まさか牢屋に非常脱出口をつけるとは。大胆かつ盲点ですね」
「ええ。まさか囚人を入れる場所に出口があるとは誰も思わないもの。さあ行きましょう」